第10章 空を覆う雲
「……疲れた」
NEXT Re:valeの収録を終えてからそのまま映画「Mission」の撮影に行っていた千が、小さく呟いた。
事務所の扉を開ければ、いつものように岡崎が笑顔で迎えてくれる。
「お疲れ様、千くん。事務所に戻らなくてもよかったのに。これから25日間ほとんど休みなしでしょう」
「モモは?」
「いますよ。撮影どうでしたか?」
「あれ、そう。……なんていうか……人間は悪くないけど、人間関係が悪くないのがわかった」
「それはそれは……」
「どうしたらいいのかは、まだちょっと」
「撮影初日ですから。そんなこともあると思いますよ」
「そうね。モモならうまくやるんだろうけど」
その時、事務所の扉がガチャリ、と開いた。
私服姿の百が入ってきて、千に笑いかける。
「ユキ来てたの?お疲れさまー!」
「モモ。零は?今日はこれからオフだろ?」
「…ああ、今日はこれから友達の家で焼肉食べる!」
「いつもならそういうのにも零を呼ぶじゃないか」
「あはは。…今日は呼べないヤツ。やばい話っぽかったら後で相談するね」
「…月雲のところ?彼はあまり好きじゃないよ。彼の事、零に話してないんだろ。彼女に言えないような付き合いはやめろ」
「零のことは絶対に巻き込みたくないから言わないだけ。…オレも好きじゃないけど、好き嫌いしてたら世界平和が成り立たないでしょ?ユキと零の好きなラブ&ピースのためだよ!ユキ、バンさんと遊びに行って来たら?」
「事務所が再編中なのと売れっこのマネージャー業務で忙しいんだって」
「ありゃりゃ。落ち着いたら、遊びに行けるといいね!じゃあ、行ってきます!」
そういって、百はバタンと扉を閉めて出て行ってしまった。