第10章 空を覆う雲
「バンさん、今日からよろしくお願いします!スーツ姿のバンさんも、めちゃくちゃ、格好いいです!」
「ありがとう、百くん。今夜は最後まで一緒に盛り上がろうぜ」
「ぎゃーー!超イケメン……!!」
万理の返しに悶絶する百。
そして、百の隣で同じく瞳を輝かせる零。
『うわあ…!めっちゃ格好いい……!!』
「ごめん、つい…百くんのファンコール受けてたら昔の癖が……」
「僕にも言ってみなよ」
「おまえを煽ったことないだろ。隣にいたんだから」
千と万理が言い合う横で、零が隣の百に視線を移せば。
先程まで興奮してきらきらと瞳を輝かせていた百はもういなくて、代わりに眉を八の字に下げている悲しそうな百と目が合った。
『……百?』
「あ……。あはは、良かったね、零!バンさんと毎日一緒なんていいなあ!」
『?うん』
「零ちゃん、そろそろメイク入ろうか。それじゃあ二人とも、今日もよろしくね」
「業務連絡かい」
「はい!よろしくお願いします!」
万理に肩を抱かれ、百と千に手を振ってから零は控室へと踵を返した。
その背中を、百はどこか寂しそうな表情でじっと見つめていた。