第10章 空を覆う雲
「あ、いたいた。ねえ、モモ。零を呼んできてよ。彼女のファンなんだ!前から言ってただろう?それなのにモモってば、全然会わせてくれないから」
了の言葉に、百はアイドルスマイルを崩さずに答える。
「あー、ダメダメ!零は最近星影さんと親交があるから。ほら、今も星影さんと仲良さそうに話してるでしょ?了さんが親しくしてたら、星影さんがよく思わないよ!」
そう答える百の顔をじっと見てから、了は再び笑った。
「へえ。それは初耳だ!零の話になると、モモはいつも必死だね。そんなにあの子が大事なら、手錠でくくりつけて物置にでも監禁したら?自分がいなきゃ何もできない身体にしちゃえばいいのに!」
「………。」
「ふふ、モモの顔が怖くなってきたところで、くだらないおしゃべりはここまでにしよう。ビッグニュースがあるんだ、モモ。聞きたいだろう?」
「……言いたいんでしょう?」
「――Re:valeはツクモの所属になる。TRIGGERも、IDORiSH7も……モモの大事な大事な零もだ」
了の言葉に、作り笑顔をしていた百の表情が一瞬にして強張った。
「………。……そりゃ難しいんじゃない?うちと小鳥遊さんはともかく、八乙女さんと星影さんは黙ってないよ」
「ツクモの前じゃ八乙女は赤子同然さ。おいぼれの星影もこれからスキャンダルで身を滅ぼす予定だ。わくわくするだろう?芸能界の勢力図は一変するよ」
「ぞくぞくしちゃうね。……物騒な計画の発案者は?」
「うーん。思い出せないな。スリッパで殴られて忘れてしまった」
「またまたー。冗談じゃんか!モモちゃんに教えてよ。今日のスーツ最高にイカしてるよ!」
「あはは、ありがとう。モモのしたたかなところは好きだよ。今度改めて話をしよう。大好きでたまらない零も呼んだら?大歓迎だよ!そしたらモモの好きな肉をたくさん焼いてあげる。牛の舌に、あばら肉に、筋繊維と脂肪が織りを成す背中のかたまり肉を。よだれが溢れそうだろう?お楽しみに。バイバイ、またね」
「………」