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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第2章 shaking your heart





―――・・・




「零。ボクと一緒に九条さんの所へ行こう」

『……私は、九条のところには行かない』

「九条さんの所に行けば、ボクの弟も零の弟も、お互いの家族も助かるんだよ。行かない理由がどこにあるっていうの」

『あの人、変だよ……ゼロを越えよう、とか夢をかなえてほしい、とか……自分の理想ばっかり突きつけて……』

「なら、ゼロを越えればいい。彼の夢を叶えれば、ボク達の夢も叶うんだよ。家族は平和に暮らせる。零とずっと一緒にいられる」

『……天、私は九条の元へ行くことだけが解決策だとは思えない。天と私は違う……私は、ゼロになんかなれないもん』

「だから、ボクがなればいい。ボクがゼロを超えて、彼の夢を叶える。そうすれば、零は何も心配することなんてない。ただ、ボクの側にいてくれれば、それで」

『……私は行かない。お父さんの友達の小鳥遊さんから、声を掛けてもらってる。私は、小鳥遊さんの元でやっていきたいの。私は歌もダンスもやったことない。天みたいに、上手にこなせる自信もない。取り柄なんて普通より少しだけましな顔だけ。それでも、小鳥遊さんはゆっくりでいいって言ってくれた。不得意な部分も、自分の得意な部分で補えばいいって!でも、九条は常に完璧を求めてる。そんなやり方、私には無理…天も一緒に小鳥遊さんのところに行こうよ!』

「行かない。だから、零が完璧になる必要なんてない!キミの分まで、ボクが全部やる。言ったでしょう、キミを幸せにするって。側にいてくれるって言ったでしょう。二人で頑張ろうって。約束、破る気?」

『違う……それじゃダメなの。どうして私の分まで天が背負うの?そんなことできるわけないよ……何でわかってくれないの……』

「わかってくれないのはキミの方だ」


―――五年前。


親の借金を肩代わりすることを条件に九条の元へ行くか行かないかで、天と言い合いになった。
何度も言い合いをしたけれど、お互いの意見は平行線で、どちらも折れることはなかった。

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