第9章 STARDAST MAGIC
「……気がつきましたか、九条さん」
「……ん……。天……。……この衣装は?僕は一体何を……」
九条家。
目を覚ました九条が体を起こす。ゼロの衣装を身に纏った自分の姿に驚き、混乱する九条に天は目を細めた。
「……今は休んでください……何も考えず、ゆっくり眠って……」
「……ああ。そうだな……。懐かしい夢を見ていたよ…。ゼロアリーナで、ゼロが歌う夢……。彼を応援するだけで……、幸福だった頃の……」
「………」
九条は言いながら、瞳を閉じた。
天はゆっくりと語りかけるように、口を開く。
「……知っています、九条さん……。本当のあなたの夢は、ゼロを超えることじゃない…。ゼロを超えるスターを育てる……そう言いながら、あなたは……自分自身で無意識にゼロになるほど、ゼロを求めてる」
再び静かに眠りについた九条を見つめながら、天は優しく毛布を掛け直してやる。
部屋の電気を消して、窓を閉めようと窓の外を見つめれば。夜空にぽつり、と星が煌めいていた。
――手を伸ばせば届きそうなのに、決して届くことのない輝き。
なんだか自分と重なって、自嘲気味に苦笑する。
打ち上げの時に百さんと話している零の顔が、頭にこびりついて離れない。
嬉しそうに笑う顔も、拗ねたように怒る顔も、頬を染めて照れる顔も。全部、全部、知ってる。だって、昔と何ひとつ変わってない。
変わったのは、それを向ける相手がボクじゃないってこと。
それだけ。
それだけなのに。
胸が苦しくて、張り裂けそう。
心臓にぽっかり穴が開いたみたい。
もがいても這い登ることの出来ない谷に落ちたよう。
でも。
そんなどん底からでも、星はいつだって頭上で輝くんだ。きらきらと、まるで自分だけを照らしてるみたいに。