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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第9章 STARDAST MAGIC




「……気がつきましたか、九条さん」

「……ん……。天……。……この衣装は?僕は一体何を……」



九条家。

目を覚ました九条が体を起こす。ゼロの衣装を身に纏った自分の姿に驚き、混乱する九条に天は目を細めた。


「……今は休んでください……何も考えず、ゆっくり眠って……」

「……ああ。そうだな……。懐かしい夢を見ていたよ…。ゼロアリーナで、ゼロが歌う夢……。彼を応援するだけで……、幸福だった頃の……」

「………」


九条は言いながら、瞳を閉じた。
天はゆっくりと語りかけるように、口を開く。


「……知っています、九条さん……。本当のあなたの夢は、ゼロを超えることじゃない…。ゼロを超えるスターを育てる……そう言いながら、あなたは……自分自身で無意識にゼロになるほど、ゼロを求めてる」



再び静かに眠りについた九条を見つめながら、天は優しく毛布を掛け直してやる。
部屋の電気を消して、窓を閉めようと窓の外を見つめれば。夜空にぽつり、と星が煌めいていた。


――手を伸ばせば届きそうなのに、決して届くことのない輝き。

なんだか自分と重なって、自嘲気味に苦笑する。


打ち上げの時に百さんと話している零の顔が、頭にこびりついて離れない。

嬉しそうに笑う顔も、拗ねたように怒る顔も、頬を染めて照れる顔も。全部、全部、知ってる。だって、昔と何ひとつ変わってない。

変わったのは、それを向ける相手がボクじゃないってこと。

それだけ。

それだけなのに。


胸が苦しくて、張り裂けそう。
心臓にぽっかり穴が開いたみたい。
もがいても這い登ることの出来ない谷に落ちたよう。


でも。

そんなどん底からでも、星はいつだって頭上で輝くんだ。きらきらと、まるで自分だけを照らしてるみたいに。

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