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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第9章 STARDAST MAGIC



『違うよ……っ、百、ごめんね、久しぶりにお酒飲んだから、ちょっと頭痛くて』

「……本当に?」



――百にだけは、嘘なんてつきたくなかったのに。



いつか誰かが言っていた。

辛い現実なんかよりも、優しい嘘の方がずっといい、と。

けれど、自分だったら、本当にそう思えるだろうか?

優しい嘘ほど残酷なものなんてないんじゃないだろうか?

わからない。わからないよ、百。

あなたはどっち――?



『………っ』

「ちょっと待ってて!今頭痛薬持ってくるから!」


そう言って慌てて立ち上がろうとした百の腕を咄嗟に掴む。百は一瞬驚いたような顔をしてから、口を開いた。


「どうしたの?頭痛薬飲んで、お水いっぱい飲めばすぐ良くなるから!薬飲んだら早めに休もう?」

『ねえ、百……百はさ、辛い現実と優しい嘘だったら、どっちがいいって思う?』


百は一瞬きょとん、としてから、ぱちぱちと瞬きをする。そしてじっと零の顔を見つめてから、優しい顔で笑って、口を開いた。


「……オレは、優しい嘘の方がいい。だって、辛い現実を知ってほしくないから、嘘をつくんだろ?傷つけないように、って。そっちの方がずっと愛を感じる。知らない事の方が幸せなこともあるんだ。その人のためを思って吐く嘘を、オレは悪いとは思わない」

『………』

「……だから、大丈夫。そんな顔しないで、零」


そういって百は、零の頭を優しく撫でた。


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