第9章 STARDAST MAGIC
『違うよ……っ、百、ごめんね、久しぶりにお酒飲んだから、ちょっと頭痛くて』
「……本当に?」
――百にだけは、嘘なんてつきたくなかったのに。
いつか誰かが言っていた。
辛い現実なんかよりも、優しい嘘の方がずっといい、と。
けれど、自分だったら、本当にそう思えるだろうか?
優しい嘘ほど残酷なものなんてないんじゃないだろうか?
わからない。わからないよ、百。
あなたはどっち――?
『………っ』
「ちょっと待ってて!今頭痛薬持ってくるから!」
そう言って慌てて立ち上がろうとした百の腕を咄嗟に掴む。百は一瞬驚いたような顔をしてから、口を開いた。
「どうしたの?頭痛薬飲んで、お水いっぱい飲めばすぐ良くなるから!薬飲んだら早めに休もう?」
『ねえ、百……百はさ、辛い現実と優しい嘘だったら、どっちがいいって思う?』
百は一瞬きょとん、としてから、ぱちぱちと瞬きをする。そしてじっと零の顔を見つめてから、優しい顔で笑って、口を開いた。
「……オレは、優しい嘘の方がいい。だって、辛い現実を知ってほしくないから、嘘をつくんだろ?傷つけないように、って。そっちの方がずっと愛を感じる。知らない事の方が幸せなこともあるんだ。その人のためを思って吐く嘘を、オレは悪いとは思わない」
『………』
「……だから、大丈夫。そんな顔しないで、零」
そういって百は、零の頭を優しく撫でた。