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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第9章 STARDAST MAGIC




『………』

「………」


天はしばらくじっと零を見つめてから、すぐにふいと視線を反らした。目が合えば優しく笑いかけてくれる天はもういなくて。頭の中では理解していたつもりだったのに、やっぱり胸がちくりと痛む。


「――零?大丈夫?」


百の声に、はっと我に帰れば。
百が心配そうな顔でこちらを覗き込んでいた。さっきまでは頬を膨らませてぷんぷん怒っていたくせに、今度は眉を下げて、心底心配そうに大きな瞳をぱちぱちさせている。


『……ごめん、大丈夫だよ!急にどうしたの?』

「本当?泣きそうな顔してたから……」



――泣きそうな顔、してたんだ。私。


百にそんな表情を見せてしまうなんて、なにやってんだろう。なんて、本当に自分が嫌になる。
あれだけ過去に蓋をして、鍵をかけようと決めたのに。いざ天を前にすれば、あっさり決意が砕けそうになるなんて。

せっかく百が、勇気を出して気持ちを打ち明けてくれたのに。

それに応えたいのに。

前に進みたいのに。――百と、ちゃんと。



「零、ごめん……。せっかくの打ち上げなのに、オレ、大人げないよね……くだらないことで、やきもち妬いたりして」


百がそんなことを言うものだから、余計に胸が締め付けられた。
――違う、百のせいじゃない、百は何も悪くないのに。今すぐにでもそう伝えたいのに、泣きそうな顔をしていた理由を言うのが怖い。百のことを傷つけることだけはしたくないのに。

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