第9章 STARDAST MAGIC
『………』
「………」
天はしばらくじっと零を見つめてから、すぐにふいと視線を反らした。目が合えば優しく笑いかけてくれる天はもういなくて。頭の中では理解していたつもりだったのに、やっぱり胸がちくりと痛む。
「――零?大丈夫?」
百の声に、はっと我に帰れば。
百が心配そうな顔でこちらを覗き込んでいた。さっきまでは頬を膨らませてぷんぷん怒っていたくせに、今度は眉を下げて、心底心配そうに大きな瞳をぱちぱちさせている。
『……ごめん、大丈夫だよ!急にどうしたの?』
「本当?泣きそうな顔してたから……」
――泣きそうな顔、してたんだ。私。
百にそんな表情を見せてしまうなんて、なにやってんだろう。なんて、本当に自分が嫌になる。
あれだけ過去に蓋をして、鍵をかけようと決めたのに。いざ天を前にすれば、あっさり決意が砕けそうになるなんて。
せっかく百が、勇気を出して気持ちを打ち明けてくれたのに。
それに応えたいのに。
前に進みたいのに。――百と、ちゃんと。
「零、ごめん……。せっかくの打ち上げなのに、オレ、大人げないよね……くだらないことで、やきもち妬いたりして」
百がそんなことを言うものだから、余計に胸が締め付けられた。
――違う、百のせいじゃない、百は何も悪くないのに。今すぐにでもそう伝えたいのに、泣きそうな顔をしていた理由を言うのが怖い。百のことを傷つけることだけはしたくないのに。