第9章 STARDAST MAGIC
「……ね、零。……オレにチャンスを頂戴」
『え?』
「男として見れなかったら、その人のことがやっぱり好きだってなったら、ちゃんと諦める。友達に戻るから。……オレ、誰よりも零を笑顔にできる自信だけはあるから……っ!その人への気持ちを綺麗な思い出にできるくらい、零を夢中にさせてみせるから……っ!だから、その、えっと……チャンス、ください……!」
一生懸命に言葉を紡ぐ百の姿に、胸がきゅ、と苦しくなる。
チャンスというのは、それは、つまり。
『…………いい、けど……っ』
「……え?嘘!?本当!?」
百は大きな瞳を、これでもかというくらい見開きながら聞き返した。
いくら私でも、こんな時に冗談を言ったりしないよ。心の中で突っ込んでから、こくりと頷いた。
「……本当に……?オレの彼女になるってことだよ?ね、零、ちゃんとわかってる?」
『……わかってるよ……っ』
「本当に!?本当にいいの!?」
『だからいいってば!!』
しつこく聞いてくる百の言葉をぴしゃりと遮るようにいえば。百は大きな瞳をうるうると潤ませている。
映画やドラマに出てくる、ロマンチックな告白シーンとは程遠いけど。
これはこれで、百らしさ100%って感じで。
私は結構好きだ。
『……ロマンチックのかけらもないよね、百って』
「……え……っ!でも、ここ海だよ!ユキが言ってた、海か夜景はてっぱんだって!」
『海も夜景も、百が隣にいるとなんか違う』
「ひどい!じゃあオレはどう頑張ってもロマンチックになれないじゃん!」
『…いいよ、ならなくて』
「嫌だよ、オレだってロマンチックな気分を零に味あわせてあげたい……」
『大丈夫、ロマンチックなんかより、ずっといいものだから。百の隣は』
そう言って笑えば。
百は時間が止まったみたいにぴしゃりと固まった。
くるくる変わる彼の表情を見ていると、本当に飽きないなぁとつくづく思う。
『……百?もしもーし』
「……ノックアウト……K.Oです……」
そういって、はあ、と手摺に項垂れた百。
「零が可愛すぎてツライ……」
『それもう何十回も聞いた』