第9章 STARDAST MAGIC
寮に戻ってシャワーを浴びて着替えてから、零が寮の前で待っていれば。すぐに見慣れた車が前に停まる。
百が車の中から出てくると、助手席のドアを開けてくれた。零は妙にどきどきしながら、車の中に乗り込む。
『あ、ありがとう…迎えに来てくれて…』
「いいえ!いつものことじゃん。……零、もしかしてなんか…緊張してる?」
運転席に乗り込んだ百が、おそるおそる聞けば。零は慌てて全力で首を左右に振った。
『ししししてない…!してないよ!なんで百といるのに緊張するの!?あはは!意味わかんない!』
「……そうだよね……」
『え……』
―――なぜか、百が落ち込んでしまった。
どうしよう。せっかく百が秘密を打ち明けようとしてくれてるのに。
これでも、少ない時間の中で少し調べたんだ。
海外のアーティストには同性同士の恋愛が多いことや、今ではそこまで世間の偏見もないこと。
BL漫画やアニメが流行っている世の中だ。何も恥ずかしがることなんてない。
そう、しっかりアドバイスしてあげようと意気込んでいたのに。
いざとなると、やっぱり緊張してしまう。
『あ……そういえばさ、百!ダニエルって知ってる?アメリカの人気歌手の!』
「え?ああ、携帯のCMの曲歌ってる人でしょ?知ってるよ!すごくいい声だよね!」
『そうそう!あの人、同性愛者なんだって!このまえ、打ち明けたって。反響すごかったみたい!昔と違って今はさ、全然偏見とかもないみたいだし、打ち明けることって勇気がいるけどさ、隠して生き続けるなんて苦しい思いしてほしくないよね。悪いことじゃないし、むしろ素敵なことなんだからさ!』
「そうだね。日本もだんだん理解も深まって来てるみたいだし、そういう人たちがもっともっと生きやすい環境になったらいいよね」
『…!だよねだよね!私もすごくそう思う。打ち明けることは、恥ずかしいことなんかじゃない。むしろかっこいいことなんだって!!』
「う、うん…そうだね…零、なんか今日は熱いね…どうしたの、急に」
『えっ……いえ、別に』