第9章 STARDAST MAGIC
―――天は一度も、目を合わせてはくれなった。
頭の中ではわかっていたことだけれど、やっぱり胸が痛む。
せっかく仲直りできたと思ったのに。
また、ふりだしに戻ってしまった。
いや。ふりだしどころか。
もう二度と、天に笑いかけてもらえることはないのかもしれない。
そんなことを思えば、心臓がきりきりと痛む。
仕方なさそうに笑う顔が好きだった。
優しく頭を撫でてくれる手が好きだった。
抱き締めてくれたときに香る甘い匂いが好きだった。
幼い頃は当たり前に側にあって。
十五の時に一度それを失った。
でも、私はまたその幸せな感覚を感じることができた。
なのに。
私はまた、それを失ってしまうのだろうか。
遠くなって行く天の背中を見ながら、まるで今までの時間は夢だったんじゃないかとまで思えて来る。
『………天』
小さく名前を呼んでも、振り返ってくれるわけもなくて。
遠くなって行く天の背中が、いつまでも過去の思い出に浸っていちゃいけないのだと語っているようで
前に進まなきゃいけないんだ、と痛いほどに実感する。
すう、と深呼吸をしてから、上を向いた。
白い天井だけが映る視界はぼやけていて、自分はこんなに泣き虫だったっけ、なんて自分に笑えて来てしまう。
陸も、百も。過去を糧にして進んでるんだ。
そんな彼らと肩を並べるんだから、私もしっかりしないといけない。
だから。
引きずってきた思いに鍵をかけて、そっと蓋をする。
もう二度と、溢れて来てしまうことがないように。