第9章 STARDAST MAGIC
「嘘だろ!?ユキも!?」
「たまにはいいだろ。僕だって頑張ったんだ。零からのご褒美が欲しい」
『じゃあ次は千ちゃ………むぐっ』
「……ダメ!!ユキには代わりにオレがハグしてあげるから!それで我慢して!」
百は頬を膨らませながら、再び零を思い切り抱き締めた。そんな百に、千はくすくすと笑いながら続けた。
「君からかい。モモ、そんなに強く抱き締めたら、零が潰れちゃうよ。ほら、息ができなくて苦しんでる」
「え!?ごめん!零、大丈夫!?」
そして百がぱっと腕を離した隙に、千が素早く零を抱き締めた。
『むぐっ…!!』
「ああーっっ!!ユキずるい!!」
「五周年記念なんだ、たまにはいいだろ。それに」
千は言いかけて、頬を膨らませている百を見た。百はハテナを浮かべながら、首を傾げる。
「それに?」
「こうして零にべたべたくっつけるのも、今日が最後かもしれないだろ?」
ぼそ、と言った言葉に百が更に首を傾げる。そんな百を横目に、千はひとしきり零を抱き締めてから、そっと解放した。
『はー……苦しかった……二人の汗で衣装べっちょべちょなんだけど。百に関しては鼻水とか垂らしたでしょ?髪ぐっしょぐしょなんだけど』
「いいじゃん!鼻水まで愛してよ!」
『汚い!無理!』
「ひどい!オレは零の鼻水だって愛せるよ!?」
ぎゃーぎゃーといつものように言い合う百と零の二人を見つめながら、千はくすっと笑った。
久しぶりに聞く二人の言い合いは、耳にとても心地よい。
―――モモ。
僕が零にハグできるのは、今日で最後にして来いよ。
大丈夫。
君の想いはきっと
空振りなんてしないから。
これから少しずつ、色を咲かせ始めるあなたの道が
とても綺麗な色でありますように。
そう心に思いながら。