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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第9章 STARDAST MAGIC




「嘘だろ!?ユキも!?」

「たまにはいいだろ。僕だって頑張ったんだ。零からのご褒美が欲しい」

『じゃあ次は千ちゃ………むぐっ』

「……ダメ!!ユキには代わりにオレがハグしてあげるから!それで我慢して!」


百は頬を膨らませながら、再び零を思い切り抱き締めた。そんな百に、千はくすくすと笑いながら続けた。


「君からかい。モモ、そんなに強く抱き締めたら、零が潰れちゃうよ。ほら、息ができなくて苦しんでる」

「え!?ごめん!零、大丈夫!?」


そして百がぱっと腕を離した隙に、千が素早く零を抱き締めた。


『むぐっ…!!』

「ああーっっ!!ユキずるい!!」

「五周年記念なんだ、たまにはいいだろ。それに」


千は言いかけて、頬を膨らませている百を見た。百はハテナを浮かべながら、首を傾げる。


「それに?」

「こうして零にべたべたくっつけるのも、今日が最後かもしれないだろ?」


ぼそ、と言った言葉に百が更に首を傾げる。そんな百を横目に、千はひとしきり零を抱き締めてから、そっと解放した。


『はー……苦しかった……二人の汗で衣装べっちょべちょなんだけど。百に関しては鼻水とか垂らしたでしょ?髪ぐっしょぐしょなんだけど』

「いいじゃん!鼻水まで愛してよ!」

『汚い!無理!』

「ひどい!オレは零の鼻水だって愛せるよ!?」


ぎゃーぎゃーといつものように言い合う百と零の二人を見つめながら、千はくすっと笑った。

久しぶりに聞く二人の言い合いは、耳にとても心地よい。




―――モモ。

僕が零にハグできるのは、今日で最後にして来いよ。



大丈夫。

君の想いはきっと
空振りなんてしないから。


これから少しずつ、色を咲かせ始めるあなたの道が

とても綺麗な色でありますように。






そう心に思いながら。


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