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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第9章 STARDAST MAGIC




『ごめんね、天。ありがとう、もう大丈夫。……行かなきゃっ!』

「………うん」


今にも込み上げてきそうな感情を必死に抑え混んで頷けば。

彼女はくるりと踵を返して、静かな廊下を駆けていった。



小さな背中が、どんどん遠くなっていく。

まるで、届かないところに行ってしまうみたいに。

こんなに近いのに、こんなに遠い。

走れば追いつくのに、走ることが出来ない。

手を伸ばせば簡単に触れることも、抱きしめることも出来るのに、決して求められる状況にない苦しさが胸を突く。


今のボクには、望むことすら許されない。


百さんのおかげで、久しぶりに話せて。
嬉しくて、幸せで―――浮かれていたんだ。
自分の状況を忘れそうになってた。


でも、久しぶりに九条さんに会って

なんのために、ボクが九条さんの元へ行ったのか。改めて気づかされた。



「………零」


苦々しく口から吐き出した愛しい名前は、ボクの心を苦しめる。だから、心の中で静かに告げた。


―――好きだよ、零。君を愛してる。


声に出してしまえば、きっと。迷うことなく彼女を求めてしまうから。


一歩でも動けば、瞳から想いがぼろぼろ溢れそう。

後ろからは、ウィザードを探していた陸や楽たちの声が聞こえてくる。


感傷に浸るのも、もうおしまい。




だから、ぱちん、と両手で両頬を叩いた。



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