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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第9章 STARDAST MAGIC






『………天……』



名前を呼ぶ聞き慣れた声に、ハッとしたように天が振り返る。

そこには、呆然と目を見開いた零が立っていて。


「………零………」

『……今の人、誰……?』

「………」


零の問いに、天は黙ったまま。何も答えない。


『なんで……天がゼロを逃がしてるの?』

「………」


何も答えようとしない天に、脳裏に浮かぶ一つの疑問。
あの天が、リスクを背負ってまでわざわざ逃がそうとする人―――。


『もしかして、さ……。……あの人……九条―――』

「っ……違う!!」


天の声が、静かな廊下に響いた。


『………そっか……』


蚊の鳴くような声で、零が呟く。
しばらくの沈黙が流れてから、零は再び口を開いた。


『……天。…聞きたいことがあるの』

「……何」


―――あの日から、ずっと。聞きたかったこと

『……天は、天の意思であの人といるの?……ほんとは……何か別の理由があるんじゃないの?』


零の問いに、天は唇を噛み締めてから、諦めたように笑った。


「……そんなこと、わざわざ言うまでもない」

『ちゃんと言ってよ、天の言葉で聞きたい…。天は、いつも大事なことは言ってくれないじゃん…。あの日、消えてよって言ったときだって…!何か、理由が―――』

「っ……ない!!」


叫ぶような天の声が、零の言葉を遮る。


「……そう思ったから言ったんだ。…ボクについてこれないなら、消えてって。……理由も何も、ない」

『そっか……。今でも……そう思ってる?』


零が、不安そうに眉を下げながら問う。


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