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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第9章 STARDAST MAGIC




『必要ないよ』

「…零……」

「歌えるだろ、モモ」

「…ユキ……」


百は、一度俯いてから震える拳をぎゅっと握る。
その手を優しく包み込むように、零が百の両手を取った。


『――大丈夫。歌えるよ、百』


零の言葉に、百は意を決したように顔を上げる。


「……っ、うん……。歌える……!オレ、歌えます!」

「了解しました!」


安心したようにスタッフが駆けていく。


『頑張って!百!千ちゃん!』

「ああ。零、色々と本当にありがとう。最高のコンサートにしてみせるよ」

『うん!楽しみにしてる!じゃあ―――』


その時、ステージへ行こうとする零の腕を、百が掴んだ。


『…百?』

「零……。ありがとう……本当に」


改まってそう言う百に、零はきょとん、としてからくすくすと笑い始めた。


『ぷっ……何、改まって』

「……あの、さ……!」


いつもみたいに、へらへらと笑い返す百はいない。
百はまっすぐ透明な瞳で、零を見つめている。


「……こけら落としが終わったら……ちゃんと、オレと千の五周年コンサートを成功させることができたら……。そしたら…」

『うん…?』

「そしたら……っ…話を聞いてくれる?……ずっと、秘密にしてたこと」


真剣な顔で言う百に、零はこくりと喉を鳴らした。
こんな真剣な表情の百なんて、初めて見たから。深刻なことなのかな、なんて心臓が騒つく。


『……うん…。わかった、聞くよ』

「ありがとう。頑張るから……オレ。最高の歌を君に届けるから!…だから、見てて」

『うん!』


笑顔でそう答えてから、零はステージへと駆けていく。


そして―――。




『皆さま、長らくお待たせいたしました!それでは、記念すべき結成五周年を迎えた――Re:valeの登場です!』

零のナレーションに、会場中から歓声が上がる。熱気にあふれたゼロアリーナは、圧巻だった。


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