第2章 shaking your heart
キャンプ場へと辿り着けば、IDORiSH7のメンバーたちははしゃぎながら駆けだして行く。
「うわー!川だー!」
『あ、こら陸!走らない!』
「大丈夫だって!ほら零ねぇも!早く!!」
『ちょっと!日焼け止め塗ってからね!?』
手を引っ張ろうとする陸を追いやってから、楽しそうに駆けていく背中を見ながら零はほっと安堵したように笑う。すると、後ろから声が掛かった。
「零さん、日焼け止め塗るのお手伝いしましょうか?」
『あ……社長の娘さんの』
「IDORiSH7のマネージャーを務めさせていただいてます、小鳥遊紡です。ご紹介が遅くなってしまって申し訳ありません…。どうぞよろしくお願いします」
『……よ、よろしく……お願いします』
丁寧にぺこりとお辞儀をする紡に、零はたじたじしながら小さな声で言った。すると紡は、心底嬉しそうに、目を細めて優しく笑った。
『………、』
「……零さん?」
驚いたように目を見開く零に、紡が不思議そうに声を掛ければ。零は頬を桃色に染めてぷいっとそっぽを向いてしまった。
『だ、大丈夫!日焼け止めくらい一人で塗れる!!』
「あっ零さん!?」
紡の呼びかけも虚しく、零は逃げるようにして車の中へ戻っていってしまった。
「紡くん」
しょんぼりとしている紡が振り返れば、そこにはアロハシャツを着て麦わら帽子を被った音晴と万理が立っている。
「お父さ……いえ、社長……私、零さんのご機嫌を損ねてしまったかもしれません……」
「いいや、むしろ逆だよ」
「へ?」
「今の反応は、嬉しかった時のヤツ。ね、万理くん」
「そうそう。すっごい嬉しくて、照れてるときの反応」
「嘘!?」
「「本当」」
にこやかに微笑む二人の格好は胡散臭いが、嘘を言っているようには思えなかった。