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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第9章 STARDAST MAGIC





「……モモ、大丈夫か?」


会場入りし、楽屋へと向かう道中で千が尋ねれば、百は不安そうに眉を下げながら笑った。


「今日、これだけのお客さんの前で歌えなかったら、オレ、もう終わりだよね…。はは…。そしたら、新しい相方探していいからね?」

「馬鹿なこと言うな」

「今日は歌えなくても傍において。脅迫状のこともあるし…。ゼロ党だっけ?熱狂的なゼロファンたちが、何かしてくるかもしれないから…」

「モモ」

「なんかあったら、オレがユキさんの盾になります」

「…止めてくれ」

「5年間、ユキさんと一緒に歌えて、死ぬほどハッピーでした」

「止めろ、モモ!」


千が怒鳴った瞬間。
二人の後ろから、声が掛かる。


『百!ちょっと来て!』

「零。どうしたの?」

『渡したいものがあるの』

「え?零からオレに?ありがとー!超嬉しい!…ちょっと、行ってくるね」

「ああ……」

「先に楽屋入ってて!」


そう言い残し、百は零の元へと駆けていく。
百の背中を見つめながら、千は一人ぽつりと呟いた。


「……。嫌だ…。二度もパートナーを失うのは。…だけど、僕がモモを苦しめてるのか?声が出なくなった原因…。零じゃないなら、僕しかない…」


千は大きなため息をついてから、楽屋の扉を開けた。


「……ッ!千さん…」


Re:valeの楽屋には、何故か大和がいて。彼はどことなく慌てている様子だ。


「…大和くん。僕たちの楽屋に何か用?」

「ああ、いや、挨拶に来たんですけど、二人がいなかったんで。もう帰りますよ。それじゃ失礼します」

「…待って」


何かに気づいたように、千が大和を呼び止める。


「なんですか?」

「…何に触ってた」

「何って…」

「モモのペットボトル、触ってただろ」

「はは…。何言ってるんですか。見間違いですよ」

「モモはそのジュースしか飲まない。親しい奴なら、みんな知ってる」

「そうですね。どうしたんすか。怖い顔して」

「身体検査してもいいかな」

「あはは。セクハラはやめてくださいよ。…それじゃ、失礼します!」


慌てて出て行こうとする大和の腕を、千が後ろからグッと掴んだ。そのとき、反抗する大和の手元から、白い粉のようなものが地面に落ちる。
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