第9章 STARDAST MAGIC
「……モモ、大丈夫か?」
会場入りし、楽屋へと向かう道中で千が尋ねれば、百は不安そうに眉を下げながら笑った。
「今日、これだけのお客さんの前で歌えなかったら、オレ、もう終わりだよね…。はは…。そしたら、新しい相方探していいからね?」
「馬鹿なこと言うな」
「今日は歌えなくても傍において。脅迫状のこともあるし…。ゼロ党だっけ?熱狂的なゼロファンたちが、何かしてくるかもしれないから…」
「モモ」
「なんかあったら、オレがユキさんの盾になります」
「…止めてくれ」
「5年間、ユキさんと一緒に歌えて、死ぬほどハッピーでした」
「止めろ、モモ!」
千が怒鳴った瞬間。
二人の後ろから、声が掛かる。
『百!ちょっと来て!』
「零。どうしたの?」
『渡したいものがあるの』
「え?零からオレに?ありがとー!超嬉しい!…ちょっと、行ってくるね」
「ああ……」
「先に楽屋入ってて!」
そう言い残し、百は零の元へと駆けていく。
百の背中を見つめながら、千は一人ぽつりと呟いた。
「……。嫌だ…。二度もパートナーを失うのは。…だけど、僕がモモを苦しめてるのか?声が出なくなった原因…。零じゃないなら、僕しかない…」
千は大きなため息をついてから、楽屋の扉を開けた。
「……ッ!千さん…」
Re:valeの楽屋には、何故か大和がいて。彼はどことなく慌てている様子だ。
「…大和くん。僕たちの楽屋に何か用?」
「ああ、いや、挨拶に来たんですけど、二人がいなかったんで。もう帰りますよ。それじゃ失礼します」
「…待って」
何かに気づいたように、千が大和を呼び止める。
「なんですか?」
「…何に触ってた」
「何って…」
「モモのペットボトル、触ってただろ」
「はは…。何言ってるんですか。見間違いですよ」
「モモはそのジュースしか飲まない。親しい奴なら、みんな知ってる」
「そうですね。どうしたんすか。怖い顔して」
「身体検査してもいいかな」
「あはは。セクハラはやめてくださいよ。…それじゃ、失礼します!」
慌てて出て行こうとする大和の腕を、千が後ろからグッと掴んだ。そのとき、反抗する大和の手元から、白い粉のようなものが地面に落ちる。