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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第8章 星霜の雫




「いや、それにしても零の宣戦布告、格好良かったね」


小洒落たバーの一角で、千がフルートグラスを傾けながら言った。



「…零……超イケメンだった……!すっっごい格好良かった!!もう、一気に100回くらい惚れ直したっ!」


興奮したようにどんどん、とカウンターテーブルを叩きながら百が続く。


『………言ってしまった………超恥ずかしい………消えてしまいたい………』


そんな千と百に挟まれて、カウンターテーブルに突っ伏す零。耳まで赤いのは、お酒に酔っているわけではなさそうだ。


「新しい伝説を作ってやる……か。うん、いいね、次の曲の歌詞に入れよう」

『やめて……思い出させないで……今なら火が吹けそう…』

「すっっごい格好よかったっ!!映画の、ワンシーンみたいだった!!さすが、オレの可愛い零!!最高に可愛くて、最高に格好いいよ!!」


終始興奮しながら、嬉しそうにはしゃぐ百。なんだかいつも通りに戻ったような彼を見ていたら、恥ずかしさだとか、そんなことどうでも良くなってきてしまった。






百の笑顔が見れたから。
千の笑顔が見れたから。

―――心から笑う二人に、また会えたから。




『……でしょ』


零は頬を染めながら素っ気なくそう答えて、グラスに注がれていたノンアルコールのシャンパンを一気に喉の奥に流し込んだ。シュワシュワと口の中に広がっていく強炭酸が、今の気分に丁度良い。

空になったグラスに再びシャンパンが注がれて行く。こぽこぽと底から湧き上がる泡が消えて行くのを見ながら、ふと、別れ際の天の表情が脳裏を過ぎった。

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