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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第8章 星霜の雫





―――天は今、どんな顔をしてるんだろう。

あの日―――どんな気持ちで・・・九条についていったんだろう。

天が九条のそばにいるのは―――本当に、自分の意思なの―――?


あんな哀しげな顔を見たら、そう確信していたことさえも揺らいでしまいそう。

天。

あなたの本当の心はどこにあるの―――?




『………』

「零、手が止まってるよ」


千の声に、はっと我に帰る。慌ててグラスを持ち直して、再び注がれていたノンアルコールのシャンパンに口をつけた。
その横で、百が口を開く。


「零、ありがとう。すっごい嬉しかった…。庇ってくれたんだってわかってても、本当に嬉しかったよ」


百の言葉に、思い切り首を横に降った。


―――だって、あれは、庇ったんじゃない。

むかついたから反論したんでもない。

つい、口走ったことでもない。

百と千なら。

みんなとなら。


―――超えられるって、思ったんだ。



『…庇ったんじゃないよ。本当に、思ったんだもん。ね、千ちゃんと百も、そう思わない?』


そう問いかければ、千と百は顔を見合わせてから、くしゃり、と笑った。


「思うっ!!」

「思う思う」

『でしょ』


三人は笑い合いながら、グラスを掲げた。
グラスの交わる上品な音が、静かなカウンターに木霊する。



朧げだけど、たしかに灯りが見えた、そんな夜だった。




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