第8章 星霜の雫
「………」
「久しぶりだな…九条!俺のことなんか覚えてないだろ」
「そうだね。君は誰だったかな」
天は目を見開いて陸を見つめている。けれど陸は動じず、九条を睨みながら続けた。
「おまえが潰した店の息子で、おまえが連れ去った七瀬天の双子の弟だよ…!」
「ああ…思い出した。天の手を握って、泣いてることしか出来なかった子だ」
「…っ今は違う!天にぃ!そいつと行くな!」
「………」
「あの頃は言えなかったけど、今は、はっきり言える!行くな!そいつといちゃだめだ!そいつは千さんを手に入れるために、千さんの相方に怪我をさせたかもしれないんだよ…!」
「…ただの噂だ」
「ひどいことを言わないでくれ。僕は千に、Re:valeに期待していたんだ。悪巧みなんかしないよ。ただ、残念に思うだけだ。…僕の言うことを聞いていれば、完全なるRe:valeになれていたのに」
「―――完全?あなたの都合のいいRe:valeでしょう」
そう言ったのは、千だ。
「久しぶりだね、千。君の友達の怪我は治ったかい」
「おかげさまで、あの日から一度も会えないままだよ」
「そうか。気の毒に」
「…完全なRe:valeはここにある。僕と、モモが、築いてきたRe:valeだ。あんたの理想を押し付けるな」
千の言葉に、後ろで聞いていた百が目を細める。
「君はともかく、隣にいる子は二流だよ。二流が側にいるとね、スターの輝きを濁らせてしまうんだ。惜しいね。千はもっと輝けたのに」
九条がゆっくりと、百に視線を移す。
「……っ、…オレは…」
『―――百は二流なんかじゃない!!』
零の口から出たのは、叫びにも似た大きな声だった。九条は驚くように百の後ろから顔を出した零を視界に映してから、大きく目を見開いた。