第8章 星霜の雫
「九条さん…」
「九条!?こいつが!?」
九条鷹匠は、ゆっくりと話し始める。
「僕と、ゼロと、春樹…。あの頃、三人がいれば、どんな夢も叶うと信じていた」
「ハルキ…?ハルキの知り合いですか?」
ナギの問いに、九条は微笑む。
「ああ、よく知ってるよ。僕はゼロのマネージャーだったんだ。ゼロのマネージャーであり、ゼロのライブの舞台演出家だった」
「Haw9……?」
「そう。ゼロの歌が輝くように、七色に弾けるように、夢中になってステージを彩った。彼が虹を変えるように、夜空の星のようにきらめくように。…だけど、ゼロは僕を裏切った。夢の半ばで僕を置いて、どこかに逃げてしまったんだよ。だから、僕は決めた。ゼロを超える伝説を作ろうって。とても、つらく、悲しい日々だったよ。世界中を巡って、スターの原石を見つけても、誰も僕の期待に応えてくれなかった」
九条は悲しげに瞳を伏せながら、淡々と語っていく。
「逢坂聡も、Re:valeの千も、折原零も。僕が差し出した手を取らなかった」
「「「!!!」」」
「チャンスを無駄にして、二流のまま終わっていった…」
「……な……!」
「だけどね、やっと僕は見つけたんだ。僕の夢を叶えてくれる子供達を。天」
「……はい」
「理」
「はい!」
「この子達が、最後に残された僕の希望だよ」
九条の言葉に、その場にいた全員が唖然としている。
「…天がゼロを超える…?ゼロを超えるために、この九条に育てられたのか…?」
「…そうだよ。13歳で養子になった時から、ずっと」
天の答えに、楽も龍も驚きを隠せない。
「……。帰りましょう、九条さん。理。」
「はい、お兄ちゃん。…ごめんなさい、九条さん。勝手に家を出て」
「あはは…いいよ。理はおてんばだね」
行こうとする三人に、環は震える拳を必死に抑えながら問いかけた。
「…待ってくれ…、そいつと行くのか…?嘘だろ、理っ……理…!」
「―――九条!」
後ろから聞こえて来た声に、九条がゆっくりと振り返る。
そこには、駆けてきた陸が息を切らして立っていた。その後ろからは、一織に千と百、零も早足で向かってくるのが見える。