• テキストサイズ

スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第8章 星霜の雫




「九条さん…」

「九条!?こいつが!?」


九条鷹匠は、ゆっくりと話し始める。


「僕と、ゼロと、春樹…。あの頃、三人がいれば、どんな夢も叶うと信じていた」

「ハルキ…?ハルキの知り合いですか?」


ナギの問いに、九条は微笑む。


「ああ、よく知ってるよ。僕はゼロのマネージャーだったんだ。ゼロのマネージャーであり、ゼロのライブの舞台演出家だった」

「Haw9……?」

「そう。ゼロの歌が輝くように、七色に弾けるように、夢中になってステージを彩った。彼が虹を変えるように、夜空の星のようにきらめくように。…だけど、ゼロは僕を裏切った。夢の半ばで僕を置いて、どこかに逃げてしまったんだよ。だから、僕は決めた。ゼロを超える伝説を作ろうって。とても、つらく、悲しい日々だったよ。世界中を巡って、スターの原石を見つけても、誰も僕の期待に応えてくれなかった」


九条は悲しげに瞳を伏せながら、淡々と語っていく。


「逢坂聡も、Re:valeの千も、折原零も。僕が差し出した手を取らなかった」

「「「!!!」」」

「チャンスを無駄にして、二流のまま終わっていった…」

「……な……!」

「だけどね、やっと僕は見つけたんだ。僕の夢を叶えてくれる子供達を。天」

「……はい」

「理」

「はい!」

「この子達が、最後に残された僕の希望だよ」


九条の言葉に、その場にいた全員が唖然としている。


「…天がゼロを超える…?ゼロを超えるために、この九条に育てられたのか…?」

「…そうだよ。13歳で養子になった時から、ずっと」


天の答えに、楽も龍も驚きを隠せない。


「……。帰りましょう、九条さん。理。」

「はい、お兄ちゃん。…ごめんなさい、九条さん。勝手に家を出て」

「あはは…いいよ。理はおてんばだね」


行こうとする三人に、環は震える拳を必死に抑えながら問いかけた。


「…待ってくれ…、そいつと行くのか…?嘘だろ、理っ……理…!」


「―――九条!」


後ろから聞こえて来た声に、九条がゆっくりと振り返る。


そこには、駆けてきた陸が息を切らして立っていた。その後ろからは、一織に千と百、零も早足で向かってくるのが見える。

/ 552ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp