第8章 星霜の雫
一方―――スタジオの前では。
環と壮五、そして龍の三人が、環の妹である理を待っていた。
そんな三人の前に、紡の運転する車が停まる。その車の中から、一人の少女が飛び出すようにして、環の元へと駆けて行く。
ワンピースの裾をひらめかせながら、四葉理は、思い切り地面を蹴って、環の腕の中に飛び込んだ。
「兄ちゃん、兄ちゃん……っ」
「理……っ!やっと、会えた…!」
二人の感動の再会に、マネージャーの車の中に乗っていたナギと三月、大和もぞろぞろと出て来てはその場面に涙している。
そしてその場に、龍を探しにスタジオから出て来た楽と天がやってきた。
「おい龍、消えたと思ったら何やってんだ?…?四葉環と……彼女は?」
「環くんがずっと探していた妹だ。やっと再会できたんだよ」
天は、その光景に目を見開いて驚いている。
「これからは二人で暮らそう」と言う環に、それはできない、と告げる理。
「ごめん、兄ちゃん。兄ちゃんが元気かどうか、会って確かめたかっただけなの。こうやって会えたから、もう十分」
「何が十分だ!遠慮しなくていい!これからは、俺が面倒…」
「お世話になってる人がいるんだ!私の新しいお父さん…。その人と一緒に暮らしてるから…」
「本物の家族は俺だろ!?」
「わかってるけどっ…私はお父さんと一緒にいたい…あの人に恩返しがしたいの!」
「だめだ!もう離れたりしない!俺と来い、理…!」
「…やだっ…」
「―――彼女から手を離して」
理の手を無理やり引こうとした環に、そう言ったのは天だった。