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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第8章 星霜の雫



言ってくれればよかったのに、と言う百に、後輩の親の悪口は言いたくなかった、と千は続けた。


「僕たちとはウマが合わなかったけど、完璧主義の天とは、九条もうまくいってるみたいだしね」

「千さんはどうして、九条さんと組まなかったんですか?」


一織の問いに、千は昔を思い出すように答えた。


「……九条はにこやかだけど、強引な男だ。…強引じゃ済まない…何かに取り憑かれてる…」

「…取り憑かれてる…?」

「…あいつが顔に怪我をしたのだって、九条が僕たちを手に入れるために、仕組んだんじゃないか。今でも僕はそう思ってる」


千の言葉に、零はこくりと喉を鳴らした。


―――ずっと、千と同じことを、思っていたから。


自分の父親の会社が倒産したきっかけを作ったのだって、おそらくは九条の仕組んだことだったんじゃないか。

あまりにタイミングが良すぎて、そう思わずにはいられなかった。

父の会社が倒産危機に陥ってすぐに、九条から養子にならないか、と話が来た。

そして―――天にも。

天の両親の店も、同時期に経営不振に陥っている。

繋がりがないなんて、とてもじゃないけれど、思えなかった。



「……天にぃはどうして、そんなヤツを信用してるんだ……九条が正しいなんて、やっぱり俺は思えない……」


悔しそうに言う陸に、千が続ける。


「今日、九条を見かけた。天の収録の見学に来てるらしい」

『!』

「え……」

「興味があるなら、おまえたちも会ってくるといい。だけど、気をつけろ。あの男の闇は深いぞ」

「………」


しん、と静かになる室内。
陸が覚悟を決めたように、口を開いた。


「…行く」

『陸……』

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