第2章 shaking your heart
「……私と零ちゃんのお父さんは、高校時代の同級生でね。親友だったんだ。お互い、娘が生まれたときは泣いて喜んだものだ。それで、零ちゃんが15歳の時、彼の会社が倒産してしまってね。その時、零ちゃんが自分にできることはないか、って、私に電話をくれたんだ。15歳の中学生が、だよ。いやぁ、あの時は本当に驚いたよ。零ちゃんは昔からとっても可愛くてね。私が芸能事務所を立ち上げようとしていた頃から何度も声をかけてはいたんだけど、本人は気乗りしなかったみたいで振られ続けていてね。でも、その時零ちゃんは、自分にできることなら、なんだってやらせてくださいって言ったんだ。アイドルなんて、と初めは乗り気じゃなかったんだけど、家族を助けられるならって、納得してくれてね。零ちゃんの弟さんは体が弱くて、入院していてね。だから、そういうことも全部含めて、15歳で家族を支えていこうとしたんだ。他の芸能事務所からもいくつかスカウトの話が来ていたんだけど、全部断って私の元に来てくれた。でも、とある人からの熱烈で過激なスカウトに困っていてね。万が一の被害が出る前に、と引越しを進めたのは私なんだ」
「……そんなことが……」
『……良い風に言いすぎですよ、社長。私はそんなできた人間じゃないですし』
「卑屈っぽくなるのは、零ちゃんの悪い癖だよ。君はもっと自分に自信を持ちなさい」
『……自信なんかもてたらとっくにもってますもん』
社長と零の言いあいに、IDORiSH7の面々は口をぽかんと開けたまま驚いている。テレビに映っている彼女のイメージ”いつも笑顔で、天真爛漫な人懐っこい妹キャラ”とはずいぶんかけ離れているからだ。
「零ねぇ、全っ然変わってないね?アイドルになって、そのマイナス思考はさすがに直ってると思ったのに!」
『そんな簡単に人の性格なんて変わるわけないでしょう。それより陸、体の方は大丈夫なの?歌もダンスもレッスン大変でしょう……無理してない?呼吸器は持ってるの?』