第8章 星霜の雫
『…万理さん!前にRe:valeのファンだって言ってましたよね?インディーズの頃から知ってたりしますか?』
「え?ああ、うん。知ってるよ」
『本当に!?じゃあ、千ちゃんの前の相方知りませんか?何か手掛かりになりそうなことでもいいので…』
「…前の相方がどうかしたのかい ?」
『実は……百が、歌えなくなっちゃったんです』
「―――ええ!?コンサートもあるのに?一体、どうして…」
『原因はわからないんですけど…もしかしたら、昔の相方さんのせいじゃないかって』
「え………?」
『あ、違うんです、その人が悪いわけじゃなくて。千ちゃんが昔の相方さんを探してて。百はその人が見つかったら自分は辞めさせられるんじゃないかって誤解してたみたいで…』
「じゃあ…その人は、見つからない方がいいんじゃないか?」
『そこも複雑なんです。でも、相方さんが見つかれば千ちゃんが吹っ切れて、千ちゃんが吹っ切れれば、百も吹っ切れるんじゃないかって…そう思うんです』
零の言葉に、万理は何かを考えるようにして黙っている。
『あんな百と千ちゃん、見てられないんです。昔の相方さんのこと、どんなことでもいいから、教えてもらえませんか?お願いします…』
そう言って頭を下げる零に、万理は慌てて"顔を上げて"、と促してから、ふう、と息をついた。
「…わかった。二人のために…千の前の相方が見つかればいいんだよね?」