第8章 星霜の雫
先の事件以来、ゼロの復活は大ニュースとして日本中に広がった。
マスコミが撮影したゼロの写真が新聞の一面を飾り―――国民的スーパースター、ゼロの出現を、みんなが待ち望んだ。
「……こけら落としの最終日に、ゼロが復活するんじゃないかってみんな噂してるよ。チケットがオークションで高値で売買されてる…… 。コンサートの主役はRe:valeなのに!」
岡崎の嘆くような声が、Re:valeの控え室に響いた。そんな岡崎を慰めるように、千が口を開く。
「僕たちの舞台でゼロが復活したら、それはそれで面白いけどな。なあ、モモ」
「あ……。うん。あはは!うん、そうだね!」
「……大丈夫か?」
どこか上の空の百。千が心配そうに問いかければ、百は笑いながらうんうんと頷いた。
「うん!今日は歌えそう!ももりんジュース飲むと、喉の調子がいい感じがするんだよ!差し入れのお菓子も、いっぱいもらったし!これなんか、美味しそう……」
空元気の百に、千は目を細める。無理に笑っているのがバレバレだった。
「……モモ。零とは会えてるか?」
「あ……ううん……っ、こけら落としも迫ってて、最近忙しいじゃん?…零も忙しいだろうし、今は…会わないほうがいいかな、って…」
「そんなの、今に始まったことじゃないだろ。どんなに忙しくたって、零に会う時間だけは無理してでも作ってたじゃないか」
「…あはは。ユキ、急にどうしたの?あ、もしかして、ユキも零に会えないから寂しくなっちゃった?………あれ?無記名の手紙が混ざってる」
ごまかすように差し入れのお菓子をがさがさと漁っていれば、無記名の手紙が混ざっているのが目に入る。百は手紙を手に取ってから、岡崎に尋ねた。
「開けてみていい?」
「自分が開けます!こんな時ですから、何があるかわかりません!」
「おおげさだなあ、おかりん」
「千くんと百くんに怪我でもあったら、大変ですから!……っ、……これは……」
岡崎は、手紙を見て目を見開いた。
"五周年記念コンサートでゼロの曲を歌えば、ゼロアリーナは大惨事に見舞われるだろう"
Re:valeの元に届いたのは―――脅迫状だった。