第7章 心音に触れられない
『勝ち組の天にはわかんないんだよ!何でもできて、なんでも一番だったような人にはわかんないんだよ!』
「は?それキミが言うの?人よりずっと恵まれてるくせに、いつまでも自信を持とうとしないで、事あるごとに悲観的になってさ。一番を取れるのに取りに行かない意気地なしなだけでしょう?」
『な……っ!そんな簡単に言わないでよ!自信を持つことも、一番を取りに行こうと思うことも、普通の人にはすっごく勇気がいることなんだよ!!天みたいな自信満々で自分主義の人と一緒にしないで!!』
「自信満々で自分主義?へえ。散々昔はボクのこと大好きとか言っておきながら、内心ではそんなこと思ってたの?ちょっと二重人格すぎるんじゃない?」
「……おまえには言われたくないと思うぞ」
楽の突っ込みは華麗に無視され、今度は零が泣きそうな顔で天に反発し始める。
『すっ…!好きとか、そういう気持ちとは別でしょ!?』
「どう別なの?ボクにわかるように説明して」
「ちょっと天、零は関係ないだろ。イジメないであげてよ!」
百が零を庇うように言えば、天は思い切り百を睨みつけた。
「イジめてるように見えたならそれは百さんの勘違いです。零と知り合って三年そこそこくらいで、口出すのやめてもらえます?」
「……モモのハート、もう限界かも……」
天の返しに更に落ち込む百。
睨み合う天と零。
「ちょっと、天にぃ!言い過ぎだよ…!零ねぇと百さんに謝って!一織もなんかフォローして!」
陸が必死に一織に助けを求めれば、一織はため息をついてから淡々と答えた。
「私はどちらかといえば八乙女さんや九条さんに近い意見ですね。言わせてもらいますけど、親身になって世話を焼いたり、良かれと思って側にいるのに、文句を言われる側の気持ちがわかります?」
千と天が「それ」と言いながらうんうんと頷く。