第7章 心音に触れられない
百と零の声が重なる。
千はぎくり、と苦笑してから、ぼそぼそと謝り始める。
「じゃあ、謝るけどさ」
「いいよ!謝らなくたって!ユキは昔の相方に未練があるんでしょ!そうでしょ!!」
「まあね。ないって言ったら嘘になるけど……」
『あるの!?そんなの浮気だよ!!』
「そうだよ!もう実家に帰らせて頂きます!」
「よせよ、母さん。子供達の前で」
「誰が子供達ですか」と一織が突っ込めば、陸が真剣な顔で口を開いた。
「でも、百さんの気持ちわかります。尊敬してた相手と比べられたらショックですよ」
「そうかあ?俺は百さんがちょっと女々しいと思うぜ」
楽の言葉に、零が反応する。
『ちょっと楽くん!それは聞き捨てならない!』
「うお!零さん…!す、すいません……」
まさか零から反論されるとは思わず、楽は慌てて頭を下げた。そんな様子が気に食わないとでもいうように、天が眉根を寄せながら零に向かって口を開く。
「比べられても、自分が負けてると思わなければ平気でしょ?」
「なにこの人生勝ち組の後輩たち……。怖いよ、零……」
縋るように零に抱きつく百を守るようにして、零は天を睨む。天は顕著に顔を歪めながら、零を鋭い眼差しで睨みつけている。