第2章 shaking your heart
『……陸……』
楽しそうにメンバーたちと笑う陸を見て、零は目を細めた。あの日天と喧嘩をして、突然姿を消した自分に陸に会う資格はない。ずっと、そう思ってきた。体は大丈夫だろうか、とか、天がいなくなって塞ぎ込んでいないだろうか、とか、不安に思っては何度陸の家の前まで行って、結局何もできずに帰ったことだろう。そんなことを、ずっと繰り返してきた。
なのに、こんな形で会ってしまうなんて。嬉しい反面、複雑な感情が胸を支配する。
零がそんなことを考えていれば、IDORiSH7の面々と紡が車の中にぞろぞろと乗り込んできた。
「……零ねぇ、隣座ってもいい?」
『陸……。うん、おいで』
そういえば、陸は嬉しそうに顔を緩めた。瞳をきらきら輝かせて、心底嬉しそうに。
そんな懐かしい笑顔に、零の胸はきゅ、と苦しくなる。
朝はあんなに騒がしかったのに、車内はどこか緊張した空気が漂っていた。サインをもらう!なんて意気込んでいたメンバーたちも、陸と零の関係にひやひやしているのだ。
もし、彼女があの九条天のように冷たいことを言ったら――今度こそ、陸のメンタルが潰れてしまうのではないか、と。
そんなことを思いながら、メンバーたちはそんな空気を悟られないように必死に適当な会話をし続けていた。
そして、陸がやっと口を開く。
「……零ねぇ、俺さ……」
『うん』
一同は、話しているふりをしながら必死に聞き耳を立てている。
「天にぃと零ねぇに近づきたくて、追いつきたくて……アイドルになったんだよ」
『………陸』
「二人と同じ位置まで行けば、二人と同じ景色が見えるのかなって……俺が有名になれば、天にぃと零ねぇの耳に入るのかなって。最初は、それだけだった」
『………』