第2章 shaking your heart
『……ちょっと社長!意味がわからないんですけど!』
一足早く乗り込んだ車の中で、零の大声が響いた。
運転席に座る社長――もとい小鳥遊音晴は、にこやかに微笑みながら口を開く。
「まぁまぁ。これから一つ屋根の下で生活していくんだから、仲良くなるいい機会だと思って」
『全然そういうのいらないんだけど!!しかも、いきなりバーベキューとか……陸がいてくれたからまだしも……。信じらんない。私が人見知りなの、知ってるくせに……』
「大丈夫大丈夫、俺もちゃんとフォローするから!任せて。それにしても、零ちゃんと陸くんがまさか幼馴染だったなんて驚いたよ。いやー、世間は狭いね!」
助手席に座る万理が、これまたにこやかに言った。
大の大人が揃って色違いのアロハシャツを着て、麦わら帽子を被っている。そんな二人を、零はこれでもか、というくらい思い切り睨みつける。
『……久しぶりのオフなのに……!!早朝に起こされるわ、騒がしい寮にぶちこまれた挙句バーベキューとか……』
「いいじゃない、賑やかで楽しいよ?皆、すごく良い子たちなんだ。きっと零ちゃんともよく気が合う。ね、万理くん」
「はい。俺もそう思います。それに、ストーカーの件、まだまだ油断はできないし、一人で住むより、事務所の近くで常に誰かいる寮にいた方がずっと安全だよ。それより零ちゃん、今日はなんでそんな早起きしたの?昨日、久しぶりにゆっくり寝れるって昨日嬉しそうに言ってたじゃない」
『……朝からしつこく電話が鳴って起こされたんですよ』
「なんだって?もしかしてまたいたずら電話?」
『違います……いたずら電話よりタチが悪い』
零の言葉に、意味を察した万理と音晴はにこやかに微笑み、口を揃えた。
「「百くんか」」
『引越しの手伝いに来るとか言うから。全力で断りました』
「あはは、相変わらず百くんは零ちゃんにゾッコンだ!」
あははと楽しそうに笑う二人に、零は本日何度目かわからないため息を吐く。人の不幸を笑いやがって、と内心思いながらも窓の外を見やれば、丁度IDORiSH7の面々が騒ぎながら車に向かってくる処だった。