第6章 声を聞かせて
「零がソファで寝るっていうんなら、オレは床で寝る!」
『はあ!?』
零が盛大に顔を顰めれば、百はずるずると引き摺ってきた掛け布団を、ソファの横に敷き始めた。
『ばかじゃないの!?』
「いいじゃん今日くらい!零の隣で寝たいんだもん!」
『だからって床で寝ることないでしょう!?それなら私が床で寝るから百はソファで寝なよ!』
「やだ!オレは床がいいの。硬くて落ち着くし!」
尤もらしいような、らしくないような反論をしながら床に寝始める百。
こう見えて、百は結構頑固なのだ。零は呆れながら、床に転がる百を見下ろした。
『……風邪ひいても知らないからね』
「引かないから大丈夫!ハニー、おやすみ。また明日」
『……はあ』
掛け布団にくるまって、ひょっこり顔を出しながら百が笑った。ちょこん、と出ている八重歯が可愛くて、なんだか憎たらしく思えてくる。
零は小さく『おやすみ』とだけ返し、毛布にくるまった。