第6章 声を聞かせて
写メ撮影と歯磨きを済ませた零が、お泊り用の毛布をクローゼットから取り出しソファに敷いていれば。同じく歯磨きを終えた百がばたばたと走ってきた。
「なんでソファで寝ようとしてるの!?いつも一人でオレのベッド陣取ってるくせに、どういう風の吹き回し?」
『今日はさすがにダメ。喉の調子悪いんだし、ちゃんとベッドでゆっくり寝て』
「だめだめ!女の子をソファに寝かせるわけにはいかないでしょ」
言いながらソファに寝っころがり始めた百。零はそんな百のTシャツをぐい、と引っ張った。
『どいてよ!邪魔!今日はこのソファで寝たいの!とっととベッド行って!』
「やだ!」
『やだじゃない!あ、どいてくんないなら、いいよ』
零は思いついたとでも言うように、ぱっとTシャツから手を離すと、テーブルの上に置かれている百のスマートフォンを手に取り、1111と打って携帯を開いた。
「残念だけど、モモちゃんの携帯見たってやましいことなんてなーんもないよ?」
『さっきの彼シャツ写メ消しちゃおーっと』
「はあ!?ちょっと待って、それは絶対だめ!!」
余裕をぶっこいていたはずの百は慌ててソファから飛び上がり、すぐさま零の両手から携帯を取り上げた。
「オレの宝物……よかったー、無事だった」
彼シャツ写メが無事だったと百が安堵している隙に、零はソファに滑り込む。ナイス・スライディング!と自分にガッツポーズをしてから、そのまま毛布にぐるりとくるまった。
「あー!!」
『じゃ、おやすみ。早く電気消して』
「………」
むう、と頬をふくらませながら、百は零のことを睨むように見下ろしている。
そんな百を無視しながら、零は自分の携帯を弄り始める。
しばらくしてから、百はすたすたとリビングの電気を消しにいった。
『(やっと諦めた!)』
零はほっと安堵してから、アラームをかける。三つ目のアラームを設定し終われば、視界の端に確かに百の姿を捉えた。部屋が暗くてよくわからないけれど、なにやら布団を引き摺っているように見える。
『…!?ちょっと何してんの!?』