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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第6章 声を聞かせて



鼻をすする音が止むまで、肩の震えが収まるまで、零は百に抱き締められている腕の中で、彼の背中をさすっていた。

ふと、零が時計を見やれば、もう夜中の一時を回っている。


『……百!もう一時だよ!』

「……え、嘘!」

『ねえやばい!ご飯食べてない!』


零の言葉に、百はあはは、と笑ってから、やっと腕を解放した。


――百の笑う顔、久しぶりに見た気がする


零はそんなことを思いながらほっと安堵して、赤く腫れあがる目を擦りながら笑う百に向かって言った


『うわ、百、顔が腫れてて超ぶさいく!』

「ひどい!零が泣かせたくせに!責任とって!ぶさいくになったモモちゃんをお嫁にして!」

『えー』


そんな他愛ないいつものやり取りが、なんだかひどく懐かしく感じた。


『お腹すいた!さっきおかりんがくれたお弁当食べよ!』

「えー!零の手料理が食べれるかもって期待してたのに……」

『……私が料理へたくそなの知ってるくせに!』

「零が作ったものならなんでも美味しいよ?へたくそでも、なんでも!」


恥ずかしげもなくそんなことを言うものだから、零は照れる顔をごまかすように眉根を寄せた。そんなことに気付きもせずに、百はおかりんからもらったお弁当を袋から取り出した。


「でも今日はもう遅いし、これ食べて寝よ!零、モモちゃんと一緒に寝る?」

『寝ない!あ、私焼肉弁当~~!』

「あ!オレの大好物がーっ!」


いつものようにふざけ合いながら遅めの夕飯を済ませた二人。零が帰る準備をしていれば、百が慌てて口を開いた。

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