第6章 声を聞かせて
その話を零が聞いた時は、千も百もお酒が入っていて、二人はこの結成秘話を懐かしむように話していた。
けれど、今思えば。
百にとって、Re:valeの五周年は、とても意味のあることなんだと零は気付く。
声が出ない理由は、もしかして――。
『……百……』
「……五周年記念で、オレは――」
百がそう言いかけたとき、零は後ろからその背中を思い切り抱き締めた。
「っ零……?」
驚いたように振り返る百。一瞬、何が起こったかわからない、といった顔をしてから、背中に生温かい体温を感じてやっと実感する。
『……ごめん…ごめんね、百……気付いてあげられなくて……』
「……なんで零が謝るんだよっ」
『大丈夫だよ、百。Re:valeは終わらない。千と百とでRe:valeでしょ?どっちがかけてもRe:valeじゃない……確かに最初は別の人が相方だったかもしれないけど、今の相方は百でしょ……千ちゃんが百を置いていくわけない!!』
「………」
『だから、大丈夫だよ百……一人で悩まないで……百はそうやって、いつも一人で抱え込むんだから…。人の心配は人一倍するくせに、自分のこととなるといつもそう…。私は百を見てるよ。嵐みたいな雨の日だって、百を見付けてあげる。びしょぬれになった髪だって、ちゃんとふわふわに乾かしてあげる…彼シャツだって、飽きる程着てあげる。ね、ほら、いつも側にいる。だから百がつらいとき、悲しいときに、ひとりぼっちで悩まないで」
「……っ…だって、カッコ悪い……悩んでるモモなんて、笑ってないモモなんて、Re:valeのモモじゃないじゃんっ……」
『カッコ悪くたっていいよ。百は百だよ。かっこいい百も、かっこ悪い百も、全部ひっくるめて春原百瀬だよ』
「……カッコ悪いモモでも……零は側にいてくれる?」
『当たり前でしょ。約束する、百の声がピアニシモより小さくても、必ず気付けるように努力していく。百が嫌な思いをしたら、私にそれを半分ちょうだい。二人で分けたら、ね、ほら不思議、嫌な気持ちも半減しちゃう。だからもう、一人で悩まなくていいよ』
百からの返事はない。
鼻をすする音が耳を掠める。百の肩は、小さく震えていた。泣いているのだと気付くまでに、そう時間はかからなかった。