第6章 声を聞かせて
元々、百は千のファンだった。
千はインディーズの頃、別の人間と組んでRe:valeをやっていたらしい。
そんな矢先、ゼロのマネージメントも手掛けていた有名なプロデューサーに声を掛けられた。けれど、方向性の違いから二人は話を断った。もっと自分たちらしくやれる事務所を見付けて、そこからデビューをする予定だった。
けれど。デビューの直前に、千の相方がステージで事故に遭った。照明が、突然千の真上に落ちてきたのだ。それを咄嗟に会い方が庇い、気付いたときには相方が顔を押さえて、ステージに蹲っていた。ライブは中止になり、相方は助かったけれど、顔に酷い傷が残った。
それが原因でデビューの話もなくなった、そんな矢先。例の有名プロデューサーが、二人にこんな話を持ちかけた。
”私と一緒に来るなら、彼の顔の傷もきれいに治るように手術代を負担してあげるよ。大丈夫だ、心配いらない。君たちには才能がある。きっと、ゼロを超える伝説になるよ”
相方の顔の傷に責任を感じていた千は、すぐにその提案に飛びついた。
けれど。
”ユキらしく、Re:valeらしく、歌える場所を探して欲しい”
という置き書きを残し、その相方は姿を消した。
その後必死に相方を探しても見つからず、千は引退を考えていた。その話を聞いた百は、いてもたってもいられなくなって、千に頼み込んだ。
”オレを仮の相方にしてください。相方が見つかるまでの間だけでいい。相方と活動していた五年間だけでもいい。オレと組んでください。お願いだから、ユキさんに、歌を止めてほしくないんです”と。
最初は断られていたけれど、一か月通いつめた朝、千はいいよと言ってくれた。
そこから、千と百としてのRe:valeが始まったのだ、と。