第6章 声を聞かせて
ドライヤーのスイッチを切って、コンセントを延長コードから引き抜く。ぐるぐるとドライヤーの本体にコードを巻きつけていれば、百が前を向いたまま、口を開いた。
「……オレ、きっと今、世界で一番幸せなんだ。自信ある」
『何、いきなり』
ぐるぐるとコードを巻きつけながら零が問えば、百はこちらを向くことなく続けた。
「だって、零がこうやってオレの側にいてくれてるんだよ?雨の中迎えに来てくれて、彼シャツ着てくれて、髪も乾かしてくれるんだよ。超ウルトラハッピーキングダムじゃん!なのに……なんで…………っなんで、」
――――「声が、出ないんだろう」
そう言った百の背中が、ひどく寂しげで。
胸が締め付けられる。
苦しくて、息がしづらい。
――私がこんなにつらいなら。
ねえ、百。
あなたは今、どれだけ辛いの――?
「……もうすぐ、約束の期限なんだ。零にも昔話したろ?」
百の言葉に、零は昔、百と千から聞いたRe:valeの結成話を思い出した。