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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第6章 声を聞かせて


百がお風呂場に駆けて行ったのを確認してから、零は部屋の片づけを始めた。
せっせと片付けていたみたいだけれど、よく見ればただクローゼットに詰め込んだだけの光景に思わず笑みが零れてしまう。


『だらしないんだから、本当』


独り言を溢しながら、散らばっている服を丁寧に畳んでいく。すると、ばたばたと足音が聞こえてきた。


「ねえ零!髪乾かして!」

『早!?』


髪を濡らしたままの百が、肩にタオルをかけて走ってきた。彼がお風呂場に行ってから、まだ10分と経っていない。


『ちょっと!ちゃんと洗ったの!?』

「洗ったよ!?何があるかわかんないから隅々まで綺麗にしました!」

『ばっ…!ばかじゃないの!?』

「あ!零、もしかして照れた?想像した?」


嬉しそうに聞く百に、零は顔を真っ赤にしながら畳んでいた服を投げつけた。


『変態!!』

「あはは!照れてる零、超可愛い!」


投げつけられた服を見事にキャッチした百は、ドライヤーを持ったまま零に駆け寄る。


「早く!髪渇いちゃう!」

『……もう!髪乾かしてとか、子供か!』

「いいじゃんいいじゃん!今日は甘やかしてくれるんでしょ?」

『……いつもと大して変わんないじゃん』


ぶつぶつ言いながらも、零はそのへんに転がっていた延長コードにドライヤーのコンセントを挿した。


『はい、こっちきて』

「わーい!」


まるで尻尾を振るわんこのように、駆け寄ってきた百が零の前に座る。


『……ていうか、お風呂早すぎじゃない?もう少しゆっくり浸かってくればよかったのに』

「だって、零がいるのにもったいないじゃん?あ、零が一緒に入ってくれるなら、別だけど!」


そういって百は、振り返って笑った。


『…!ばっかじゃないの!』


勢い余って、ドライヤーの温風を百の顔に”強”で充てる。


「熱っっ!?」


―――熱いのはこっちだよ!

バカ百。

百がそんなことを言うものだから、耳まで赤くなっているのがよくわかる。
気付かれないように、百の顔を無理矢理前に向けてから、ドライヤーを彼のふわふわの髪に充ててやる。もうほとんど渇いているじゃないか、なんて心の中で文句を云いながら。
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