第6章 声を聞かせて
『相変わらずきったないなぁ……ちょっとは片付けしたら?』
いつも通り散らかっている部屋を見渡してから、零が言った。
サッカーボールやら、ももりんのペットボトルやらがその辺に転がっていて、脱いだままの服がところどころに散らばっている。
「いいのいいの!零が片付けてくれるから!」
『……はあ。こんな汚い部屋じゃ、女の子もろくに呼べないよ』
「呼ぶ気ないから大丈夫!モモちゃんは零だけでお腹いっぱいだから!」
百は言いながら、クローゼットをあさっている。
「これならサイズいい感じじゃない!?ちょっと短いかもしれないけど、モモちゃんのためだと思って我慢して!」
百がそういって投げつけてきたのは、百サイズの白いシャツだった。
『これ、絶対狙ってるでしょ』
「え?なんのこと? ほら早く早く~!シャワー浴びてこれに着替えてきて!念願の彼シャツってやつ!」
『……何が、なんのこと?だよ』
「いいからいいから!」
『ていうか、百が先に入りなよ!』
「だーめ!零が先!」
百に促されて、零は無理矢理背中を押されてお風呂場へ。
シャワーを浴びてから、百が出してくれたバスタオルで体を拭けば、百からいつも香ってくる柔軟剤の匂いが鼻いっぱいに広がった。
そして、百に渡されたシャツに着替える。
すっぽりと太ももまで隠れる絶妙なサイズ感は、計算しているんじゃないかと思えるほどだった。
『……百の前でこんな格好して、何の意味が……』
鏡に映る自分を見てから、ため息と共に独り言をつぶやく。
――でも。
おかりんの言ってた通り、百が元気になってくれるなら。もうこの際、なんでもいいか。
そんなことを考えながら、零はお風呂場のドアを開けた。