第6章 声を聞かせて
「零、天と一緒にいたんじゃなかったの?」
車の中で、髪の毛をわしゃわしゃと拭きながら百が訊ねる。
同じく髪の毛をわしゃわしゃ拭きながら、百の隣に座っている零が答えた。
『うん。百のことが心配なら、行ってきなって言ってくれた』
「天……お前って奴は……!オレはいい後輩を持ったなあ……」
うう、と顔を歪める百。
『でしょ!そんな後輩のためにも、早く元気な百に戻ってね!』
「うん!……来てくれてありがとう、零。すっごい嬉しい」
そういって、百は優しく笑った。
―――なんだかその笑顔が、やたらと大人びて見えて。
心臓が、きゅっとなる。
『……うん』
――なんだか、頬が熱いような。
これはおかりんの云う通り、風邪を引いたかもしれない。
零がひやひやしていれば、百が続ける。
「ねえ零、今日はオレと一緒にいてくれる?」
『当たり前じゃん。そのために来たんだもん!』
「やったー!おかりん、ごめん……。明日のフ○イデーの表紙は、オレと零との熱ーいぶっちゅー写真かも……!」
「……はあ。百くんと零ちゃんの熱愛報道なんて、出過ぎてみんな飽きてますよ。ぶっちゅー写真だって、今更かよ、くらいにしかなりませんよ」
「ひどい!!まだ始まってもいないのに!?もうみんな飽きちゃってるの!?」
「だから、安心してぶっちゅーでもなんでもしてきたらいいですよ!」
『ちょっとおかりん!?それマネージャーが言うことなの!?』
「この際、百くんが元気になるなら何でもいいです!」
『うわあ……!』
「ハニー、今夜は帰さないぜ?モモちゃん、頑張っちゃうよ!!」
『…帰ろうかな』
「あーっ!うそうそ、冗談だって!ちゃんといい子にお預けしてるから!帰らないで~~!」
そんな賑やかなやり取りをしていれば、あっという間に百の住んでいるマンションに到着した。笑顔で「頑張ってね」と手を振るおかりんと別れ、二人は百の部屋へと帰って行った。