第6章 声を聞かせて
天と別れてから、零は土砂降りのなか、なんとかタクシーを拾って百が行っている病院まで向かっていた。
百に電話をしても、直留守に繋がってしまう。それを何度か繰り返していれば、千からの電話が鳴った。
『……もしもし、千ちゃん!?病院終わったの!?』
≪ああ、今おかりんから連絡来たよ。何でもなかったみたいだ≫
『……そう。じゃあ、やっぱり……』
≪精神的なものだろうね。零、最近モモと喧嘩したりした?≫
『ううん、してないよ。いつも通り、全然普通』
≪そうか……≫
『何があったんだろ……さっき、百から病院行く前に電話あったの』
≪なんて?≫
『何か言いたげだったんだけど、なんでもないって、切られちゃった』
≪……。零、時間が許す限り、モモの側にいてやってくれないか?≫
『え?うん、私でよければ…。でも、千ちゃんも一緒じゃだめなの?』
≪僕もできればそうしたいんだけど。今は難しそうだ。さっきも食事に誘ったら断られた≫
『え!?百が千ちゃんの誘いを断ったの!?ありえない……』
≪でしょ。だから、今は僕といたくないのかなって。モモのこと頼めるのなんて、零しかいないから。頼んでもいいか?≫
『勿論だよ。今、百はどこにいるの?』
≪まだ病院にいると思う≫
『わかった!ありがと、千ちゃん』
電話を切ってから、タクシーを飛ばしてもらい、ものの十分程度で病院に到着した。この時間では一般外来は閉まっている。夜間入口の方へ駆けていけば、丁度、入口から出てくる百と岡崎の姿が見えた。