第6章 声を聞かせて
Re:valeの控室を出てから、零は自分の控室に戻る。携帯を確認すれば、天から待ち合わせ場所のラビチャが入っていて、彼はもう既に到着しているようだった。
<今から向かうね>
と送信すれば、すぐに既読がついて、”了解”と文字のついたうさぎのスタンプが送られてくる。
天と二人で食事をするのなんて、本当にいつぶりだろう。
小さい頃は、よく親に隠れて、お小遣いでこっそりドーナツを買って食べたりしていたっけ。
久しぶりで、嬉しいはずなのに。さっきまでは、楽しみにしていたはずなのに。
どこか心が晴れなくて、どんよりしていた。
零は浮かない気分のまま着替えを済ませ、マネージャーが呼んでくれていたタクシーに乗り込んだ。
待ち合わせ場所までは15分ほどで着くだろう。窓から流れる景色を眺めていれば、ぽつ、ぽつ、と空から降ってきた水滴が窓を濡らした。
『……雨……』
ぼそり、とそう溢せば、どんどん雨が強まっていく。
―――百は、大丈夫だろうか。
今頃、岡崎と共に病院に行っている頃だろう。どうだったか診察が終わったら連絡をすると約束していたが、心配で心が落ち着かない。
どんどん本降りになっていく雨が、なんだか百の心を表しているような気がして、胸が苦しくなる。
そんなことを思っていれば、天と待ち合わせをしていた場所に到着した。零は不安を抱えながらも、天の元へと向かった。