第6章 声を聞かせて
「あー。あーあー。あー!あーーー!」
Re:veleの控室では、百の発声練習が響いていた。
「モモ……」
「な?聞こえただろ?声は出るんだ。大声だって出せる。なのにな?歌おうとすると、喉の奥が塞がったみたいになって、声が出ないんだ。なあ、ユキ、零、なんでかな?」
百の問いに、千と零は不安そうに顔を見合わせた。
きっと、千と零以外の人から見れば、いつもの百と何も変わらない。
けれど付き合いの長い二人には、これが空元気ということが手に取るようにわかるのだ。
『……大丈夫だよ、病院に行けば治るよ。ね、千ちゃん』
「ああ、絶対治る」
「咽喉科に行けばいい?でも、話す時は声が出るんだよ」
百の言葉に、千が言いづらそうに口を開く。
「心療内科にも……」
「なんで?楽しいのに!何も悩んでなんかないよ!ほら、変顔!あはは、ウケた?」
無理に変顔をして笑わせようとする百に、きりきりと胸が痛む。
『念のためだよ、百』
「見て!リラックスだって出来る。ほら、だらん。体の力全部抜いちゃってる」
「『モモ/百』」
「………。ごめん……。オレのせいで、迷惑かけて」
「大丈夫だ」
『迷惑なんてかかってないよ、大丈夫』
「……ユキ、零……どうしよう……。このまま歌えなかったら……」
「君は大丈夫だ。ね、零」
『うん。百は大丈夫。絶対大丈夫だから』
「僕と零を信じろ」
「ユキ……零……超イケメン」
「知っている」
『ついに私もイケメンになっちゃった』
三人の笑い声が、控室に響く。
けれど。心の中にある曇った感情が、晴れることはなかった。