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スローダンス【アイナナ/R18/百/天】

第6章 声を聞かせて





「あー。あーあー。あー!あーーー!」



Re:veleの控室では、百の発声練習が響いていた。


「モモ……」

「な?聞こえただろ?声は出るんだ。大声だって出せる。なのにな?歌おうとすると、喉の奥が塞がったみたいになって、声が出ないんだ。なあ、ユキ、零、なんでかな?」


百の問いに、千と零は不安そうに顔を見合わせた。
きっと、千と零以外の人から見れば、いつもの百と何も変わらない。
けれど付き合いの長い二人には、これが空元気ということが手に取るようにわかるのだ。


『……大丈夫だよ、病院に行けば治るよ。ね、千ちゃん』

「ああ、絶対治る」

「咽喉科に行けばいい?でも、話す時は声が出るんだよ」


百の言葉に、千が言いづらそうに口を開く。


「心療内科にも……」

「なんで?楽しいのに!何も悩んでなんかないよ!ほら、変顔!あはは、ウケた?」


無理に変顔をして笑わせようとする百に、きりきりと胸が痛む。


『念のためだよ、百』

「見て!リラックスだって出来る。ほら、だらん。体の力全部抜いちゃってる」

「『モモ/百』」

「………。ごめん……。オレのせいで、迷惑かけて」

「大丈夫だ」

『迷惑なんてかかってないよ、大丈夫』

「……ユキ、零……どうしよう……。このまま歌えなかったら……」

「君は大丈夫だ。ね、零」

『うん。百は大丈夫。絶対大丈夫だから』

「僕と零を信じろ」

「ユキ……零……超イケメン」

「知っている」

『ついに私もイケメンになっちゃった』



三人の笑い声が、控室に響く。

けれど。心の中にある曇った感情が、晴れることはなかった。


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