第6章 声を聞かせて
「………あ………」
曲が始まったにも関わらず、百の声が聞こえてこない。
――「どうしたんだ!?百さん!?」なんて、あちこちからスタッフの声が聞こえてくる。
「………声が……。……歌おうとしたら、声が出ない………」
『……百……?』
その日、何度テイクを重ねても、百の歌声が聞こえることはなかった。
やむをえず、音をテープで流して、歌った振りをして収録することになった。
ゲストも、スタッフも、驚きを隠せなかった。
その日、誰かが言った。
それはまるで、ゼロが自分の曲のカバーを嫌がっているようだ、と。