第5章 ボクはキミを
「……陸……」
出てきたのは、瞳いっぱいに涙をためている陸だった。
『陸……泣いてるの?』
「……っ天にぃが何を言ったって、けほっけほっ、オレは絶対IDORiSH7を辞めたりしないからな!」
「「「IDORiSH7を辞める……?」」」
「天にぃはオレを捨てたけど、みんなはオレを必要としてくれるんだから!ひどいこと言うのは天にぃだけだ!!天にぃなんか……っ、はっ、はっ……」
『ちょっと陸、落ち着いて』
零が陸に駆け寄り、背中をさする。けれど陸の勢いはとまらない。
「おい、何があったか知らないがその辺にしておいたらどうだ。蕎麦が冷めるぞ」
「蕎麦屋が仕切らないで」
「助け舟をだしてやったんだろ!?」
楽を無視して、天は陸に向き直る。
「陸……聞いて」
「聞かない……けほっけほっ」
「…ボクの言うことが聞けないの?」
「絶対に聞かない!」
「そう……なら、もういい。わからず屋と話をするのは止める」
『ちょっと天、そんな言い方……』
「零は黙ってて。アイドルとして、ボクは陸を認めない」
「……っ……」
「だから、おまえは言いすぎ――」
「蕎麦屋は黙ってて!」
天が楽に怒鳴った瞬間、トイレから龍が戻ってくる姿が見えた。
「ごめん、ごめん!ついトイレで眠っちゃったよ!おかげで酔いが冷め……どうしてみんな揃ってるんだ!?零さんまで!?ここはカラオケじゃないのか!?」
「……帰るよ、龍」
「……天、何かあったのか?大丈夫か…?様子が……」
「何も」
「……じゃあ、器は外に出しておいてください」
天を筆頭に、楽と龍も玄関へと向かう。
『ちょっと天!待ってよ!』
行こうとする天の腕を零が掴めば、天が不機嫌そうに顔を顰めながら零を睨みつけた。