第2章 shaking your heart
「それじゃあ、IDORiSH7の皆も一人一人自己紹介をしようか」
呆然としていた八人に向かって、社長が言った。
誰から自己紹介をするか、なんてこそこそ言い合っている彼らをぼけっと眺めていた零が、蚊帳の外で一人俯いている人物に視線をとめた。
『………!』
「?零ちゃん?どうかした?」
社長の言葉など聞こえていないかのように、零は一歩、また一歩、と部屋の中へと足を踏み入れる。
『………陸?』
零の口から出た言葉に、そこにいた全員が目を見開いた。
一人俯いていた陸が、勢いよく顔をあげる。
「………零ねぇ……っ」
『陸……本当に陸なの?』
零の言葉に、うんうんと頷く陸。零はそのまま小走りで駆けると、陸をぎゅ、と抱きしめた。
「「「!?!?」」」」
『……陸っ……久しぶり……っ』
「久しぶり……俺はいつもテレビで零ねぇのこと見てたから……久しぶりって気がしないけど……会えて本当に嬉しいよっ……」
『そっか……見ててくれたんだね』
「当たり前じゃんか……なんで……っなんで急にいなくなって、連絡もくれなかったんだよ……俺も天にぃも、本当にッ」
『ごめん。ごめんね……天と喧嘩しちゃって、それ以来、二人に会いづらくなっちゃって』
「天にぃと?」
抱き締めていた腕を解放してから、零は困ったように微笑んだ。
これ以上は聞かないで、とけん制されたような、そんな気がした。
陸は双子の兄である天と、彼女との関係が自分以上に深かったことは幼いながらにわかっていた。天は零のことを宝物のように大事にしていたし、いつも目で追っていたから。物心ついた時から、彼女が姿を消すまで、それは変わらなかった。だからこそ、突然姿を消してしまった彼女に胸を痛める天の姿が、今でも陸の目に焼き付いている。