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【黒バス】こんなにも僕等は

第3章 なみだ見せて/黄瀬涼太









彼は私が呼ぶ度にちゃんと振り向いてくれるんだ。クラスではいつも笑顔でみんなの真ん中にいるような人。ふざけた事だってする面白い人。そのくせバスケをする顔はすごく真剣で。そのギャップも好き。容姿も完璧だけど性格もいい。話した瞬間恋に落ちたんだ。でもそんな彼は人気者で、噂によると怖い先輩方が作ったファンクラブがあったり、裏で虐めが起きていたりとよくないものを聞く。それでも彼を好きだと言う子が絶えないのはそれほどの魅力を彼が持ち合わせているからだと思う。





ある日、彼の部活の試合を見に行く事にした。相手は名高い高校ではないから黄瀬くんが出るかなんてわからなかった。だけど噂によると調節程度に試合に出るみたい。そんな試合が此処、海常高校で行われる為、出番があるかわからない黄瀬くんだけど、距離といい行きやすさといいそりゃ沢山の女の子が来るだろう。そんな思惑から目立たずに応援できるだろうと思い、私も参戦することにした。聞いていた開始時間ギリギリに体育館に入った。応援用に設けられたスペースには想像以上の女子生徒の数。なんとかそこに紛れ込んだとき、選手が整列した。





(あ、黄瀬くんだ……)





不意にこっちを向いた黄瀬くんと目が合った気がした。だけど、周りにいた子たちが「あたし、目があっちゃった―」なんて騒いでいたから気のせいかな、と一瞬盛り上がった気分がすぐに平常心に戻った。そうだよね。この距離で誰と目があったかなんて黄瀬くんしかわからないだろう。女子の声援は止むこともなく続き、試合が開始された。



やはり圧倒的に海常の方が強く、点差は開く一方だ。今日の黄瀬くんはあまり目立つようなプレーをしていないのに敵のマークがすごい。それほどすごいプレーヤーなんだと実感出来る。





「すごいな……」





仲間を信頼しているからこそのチームワークが好き。ボールのつく音とか、バッシュの音とか、歓声とか、バスケの試合の音たちが好き。





「………」





そして彼が大好きだ。





「頑張って……」





試合はいつの間にかに第4クオーターの残り30秒になっていた。もう点差は開いているが両者とも諦めていない。周りの声援も熱を増し、とても盛り上がっている。




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