第10章 新米探偵に依頼あり
数日後、智晃は凛に呼び出された
智晃
「学校にも来ねぇで何してんのかと思えばこれか」
凛
「場所は私にお任せくださいと言った筈です。まずは形から入りませんと。活動拠点は大事です」
智晃と凛の視線の先には二階建てのレンガ造りの建物があった
凛
「借りていた家を出て事務所の下で生活をする事にしたんです」
智晃
「んなら、この二階が事務所なのか」
凛
「はい、そうです。…来てください」
そう告げて歩き出す凛の背中を追い階段を上る
智晃
「おい、このネーミングはどうなんだ?」
凛
「あら、駄目でしたか?」
綺麗な黒の扉にかかっているプレートを見ながら智晃は呆れ顔で隣にいる凛に問い掛けたが、どこがおかしいのか分からない凛は不思議そうに首を傾げている
智晃が呆れている理由はプレートに書いてある事務所の名前だった。
“断らない探偵事務所”
智晃
「出来そうにねー内容だったらどうすんだよ」
凛
「何とかするんですよ。この名前の方がどんな依頼でも人が来てくれそうじゃないですか」
智晃
「まぁ、確かにな。断らないって書いてあったら来るわ。…けどなぁ」
どうも納得が出来ない智晃は腰に手を当てながら首を傾げるが、彼女の中ではもう終わったようで
凛
「さて、中に入りますよ」
ニコニコしながら扉を開けていた。
それを見た智晃は抗議するのをやめ溜め息を溢してから彼女の言葉に従う
室内はブラウンを基調としたアンティークな物で包まれていて珈琲でも飲みたくなるような、そんなゆったりとした時間が似合う空間だった。
智晃はこの空間と凛を視界に入れると、物語の中の一コマのように見えて思わず見惚れていた
凛
「どうですか?良い雰囲気だと思いません?」
彼女に声を掛けられ、はっとした智晃はその言葉に慌てて頷いてみせた