第9章 彼等が生きた証
凛
「一気に力を解放してしまうと強い力に耐えられなくなってしまうからです」
智晃
「けど、俺の力なんだろ?」
凛
「はい。ですが、幼い頃から今まで人間として過ごしてきました…そうなるように私もあの日、力に蓋をしました。今の貴方は人間の力にしか耐えられない状態です。少しずつ耐性をつけて蓋を開けていきます」
智晃
「成る程な…ちっせぇもんにでけぇのは入れられないのと同じか」
智晃は顎に手をあてながら、小さなゴールに大きいボールを想像しながら呟いた
凛
「そういう事です。…それで、私考えたんです」
智晃
「何をだ?」
凛
「短期の探偵事務所を開くんです」
智晃
「………は?」
予想もしていなかった提案に智晃は反応するのに少しの時間がかかった。
凛
「探偵事務所で依頼を受けたり、自らが赴いて事件性のあるものを探し短期間で力の耐性をつけるんです」
智晃
「んなもんで耐性がつくのか?」
凛
「普段の生活ではそう簡単に力を使う場に遭遇しません。ですが、依頼や事件性の先には必ず力を使わなくてはならないような場面がやってきます。なので、その機会を作るんです」
智晃
「はぁ…成る程な?けど、日常生活でも力を使う時は使うだろ」
凛
「量と質が変わってきます。日常生活で使用する力は僅かですので、それだけの力では蓋は開いていけません。事件になれば力は沢山使い集中するので質も上がります」
凛の説明に智晃は確かに…と納得するしかなかった。
智晃はその話を受けるか悩んだが早く元の力を手に入れて強くなりたい、その気持ちの方が遥かに大きかった…だから、答えは一つしかない
智晃
「分かった。凛の言う通りにする」
智晃の言葉を聞いて凛は嬉しそうに笑みを浮かべてから、指をぱちんっと鳴らし普段の丸眼鏡に緩三つ編み姿に戻った