第7章 一つの決意、大きな一歩
【智晃 side】
あいつの…去っていく背中を見た
追いかけて
手を伸ばして
掴めそうなのに
その背中は段々と遠くなる
振り向いたあいつは…笑ってた
そんな…夢を見た。
空気は暖かい筈なのに
俺の周りだけ悲しくて苦しくて重い─
そんな…夢を見たんだ。
お前の事は…ぜってぇ忘れねぇ。
春太を埋める時に勝手に貰ったあいつがいつも身に付けていた長めのネックレスが今は俺の首元に身を寄せていた
その銀をぎゅっと一度強く握ると大きく息を吐く
智晃
「行ってきます」
母
「気を付けてね」
どことなく元気のない声に見送られて俺は学校…ではなく、春太のいる丘に向かう。
母さんと父さんは春太と仲が良かったから元気がないのも当たり前だ、家の空気はいつも通りのようでそうじゃなくて少しだけ暗かった
凛
「おはようございます」
智晃
「はよ」
凛
「お話とはなんでしょう?」
【NO side】
二人の間に静かな風が吹き芝や木々を揺らす
智晃
「…俺はもう守られるのは嫌だ」
凛
「………」
智晃
「守られてばっかだったから、大事な友達を失っちまった…俺のせいで。こんなんは嫌なんだ…守られる側じゃなくて、守る側になりてぇんだ」
風が智晃の背中を押すように強くなる
智晃
「あの時、凛が持ってた武器が俺も欲しい」
凛
「分かりました。…ですが、一つ条件があります」
智晃
「…何だ?」
凛
「貴方の両親に自分が生まれた時の事を…聞いてください」
智晃
「それ…何の必要があんだ?」
凛
「受け入れなければならないからです」
真剣な眼差しが眼鏡越しに伝わってくると智晃はそれ以上、何かを問う事はせず静かに頷いたのだった