第1章 願いをこめて
「そっちだぁ!囲い込め!」
「おお!」
響く
「ぐあっ…!」
響く…
「うっ…!」
響く―…
「かは…っ」
命が奪われる音が周りに止む事なく響く
「くそっ…埒が明かん…!」
額に汗を滲ませながら、二本の刃物を受け止める屈強な男の背後に刃物を振り翳した別の男が現れる
「あなた危ない…!!」
自らも刃物を交わしている優しげな女の焦った声が響いた
「……っ…!」
もう駄目だ…そう思ったが、そこへ現れる一つの氷の矢
「“ ”…!」
「大丈夫ですか!」
「嗚呼、助かった…!」
氷の矢は新しい声の主のものであり、その人物の登場により男と女の傷がついた顔は僅かながら安堵の笑みが覗いた。
「あなたに、頼みたい事が…!」
女が目の前の敵を薙ぎ倒しながら声をかける
「何です…?」
まるで武器を交えているとは思えない程不釣り合いな静かで澄んだ響きのそれは、ここが命を奪い合う場であるのを錯覚させる。
そして、告げられた言葉に静かに頷いたのだった
──────……
────……
「これで、心置き無く戦えるな!」
「ええ、心配事はなくなったわ!」
先程まで居た澄んだ声の持ち主の姿はそこにない。
だが、再び力が沸き出した男と女の顔には笑顔が戻っていた。
そしてまた響かせる…
命を奪い合う無遠慮な音を―