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彼岸花を抱いて

第15章 この世界の事





「ふふ、此処の近くに美味しいお店があるんです。行きましょう?」

智晃
「お、おう」


凛に案内されて辿り着いたのは木造建ての可愛らしいお店。
扉を開けると、からんっとベルが鳴った


店主
「いらっしゃいませ。…おや、凛様。本日は新しいお仲間さんと一緒なんですね」


「こんにちは。…ええ、そうなんです」

智晃
「こんにちは」


カウンターの奥でカップを拭いている、紳士的な空気を纏う店主が柔らかく笑んでいた。
凛が座った窓際のテーブルに智晃も後を追って腰掛けた


店主
「何になさいますか?」


「私はいつものでお願いします。…智晃」


メニューを凛が智晃に見せたが、彼は凛と同じものを頼んだ。
店主は畏まりました、とお辞儀をしてからカウンターの奥へと消えた。



「良かったんですか?同じもので」

智晃
「ああ。…良く来るのか?」


「はい。此処の雰囲気も食べ物も凄く好きなんです」

智晃
「そうなのか…楽しみだな」


二人が他愛ない会話をしていると店主がテーブルを二人の前に置いた。
ふわふわのパンにレタスに分厚いトマト、崩れない程度にとろっとした卵が挟まれたサンドイッチ。
マカロニサラダに食欲をそそる香りのオニオンスープ

どれも凄く美味しそうで智晃は嬉しそうに笑って、合掌をしてからサンドイッチに齧り付いた。


智晃
「ん…!」


「美味しいですよね?」

智晃
「美味い…!」


「良かったです」


自分の好きな物を気に入ってもらえた様子に凛は嬉しそうに微笑んだ。
彼女はオニオンスープを木のスプーンで掬い上げて口へ運ぶ。
やはり、一つ一つの仕草が彼女は綺麗だ

二人は食べ終えると挨拶をして一つ息を吐く。



「そろそろ出ましょうか」

智晃
「そうだな」


お金を支払うのは人間と同じ様だが、お金が人間界にあるものとは違う姿形をしていた。
そうして、二人は店主にお礼を述べてから来た時と同じ様に扉のベルを鳴らして店を出た



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